後継者がいない不動産を持て余していた南條夫妻
自宅の1階で経営する文具店を続けながら不動産を売却するために、コンサルタントが提案をしたのは「家を半分にして土地と建物を売る」という内容でした。
「家を半分にする」と聞いてもピンとこない様子のお2人に、説明を加えます。
この先、南條夫妻が必要とする「文具店の店舗」と2人が暮らすのに適当な広さの「自宅」は近い方が良い。
商売をこれまで通り続けるのであれば、現在の住まいの近くであることが条件。
しかし近所には手頃な物件がない。
これらの点を総合すると、
現在の店舗兼住居のうち、南條夫妻に必要な部分「以外」を取り壊した後に土地・建物を売却し、縮小した建物をリースバックして利用するのが望ましいと考えたのでした。
売却前に建物を改装するための費用負担は発生しますが、この方法ならば、新たに建てたり購入したりするよりはずっと低予算で、希望通りの物件を得ることが可能です。
また、手順を工夫すれば、文具店の営業を続けながらも工事を進められます。
年配のお2人にとっては、引越しも相当な骨折りとなるであろうことを懸念したうえでの提案でした。
これを聞いたお2人。同じ場所で商売を続けられるならばそれに越したことはない。引越し作業の煩わしさからも逃れられるならこれ幸いと、たちまち乗り気になりました。
結局、店舗兼住居のうち、表通りに面した南側の前半分を残し、建物の北側後半分を取り壊すことに。これならば、従来の店舗部分は手を加える必要がありません。
改めて業者に相談すると、問題なく工事はできるとのこと。
工事の内容は、まずはお風呂やトイレなど、生活に必要な設備を建物の前半分に移設。続いて、建物の残す前半分と取り壊す後半分を隔てる壁を作った後に、不要となる後半分を解体するという計画です。
「なんだかあの番組みたいな大改造だなぁ」
建築業者の説明を聞きながら南條氏がそうつぶやいたことがきっかけで担当者を「匠」と呼び、その場が盛り上がったことは余談です。しかし、この計画が、誰もが納得する形で進み、爽快でドラマチックなものであったのは間違いありません。
賑わいのある商店街という立地も幸いして、買主も程なく決定しました。
つい先日、担当が南條氏のお宅を訪問した時には、建物の奥へ続いていた廊下部分に洗面所などの移設工事が終わり、建物の前後が壁で二分されたところでした。
壁の奥にも廊下は長く延び、20畳もの広く立派な座敷もあったことを思うともったいない気もしましたが、ご夫妻は「これで掃除も楽になる」と晴れ晴れとした表情。
一度は文具店をたたむ決意だった南條氏も
「せっかく同じ場所で商売を続けられるのだから、せいぜい足腰鍛えて頑張ろう」と、気持ちを新たにしています。
[2013.4.2更新]