前年同月から預金は31兆円、貸出金は11兆円増加
帝国データバンクが平成29年6月30日発表した、「国内112行の預金・貸出金等実態調査」によると、平成29年3月末の国内主要金融機関の預金は719兆8,800億円と、前年同月から31兆5,094億円増加しました。
大手・地銀・第二地銀3業態112行中、全体の構成比83.9%に当たる94行で預金が増加しています。
一方、貸出金も同11兆5,371億円増加し505兆1,669億円となりました。構成比でも87.5%に当たる98行で増加しています。
ただ、平成29年3月までの1年間で金融機関が預金者に支払った預金利息は、大手銀行(三菱東京UFJ、みずほ、三井住友、りそな、埼玉りそな、新生、あおぞら銀行)で32.4%増加したものの、地銀、第二地銀では20.3%減少しました。
低金利政策で利ざやは1,000億円減少
日銀のマイナス金利政策により、112行中94行が預金増加となりましたが、105行で預金利息が減少する結果となり、収益の悪化が浮き彫りとなりました。
本業の利ざやでも平成29年3月に5兆5,801億5,200万円と、前年同月から1,058億9,200万円減少。3業態全てで減少傾向にあります。
預金・貸出金が増加傾向にあるものの、超低金利の影響もあり、貸出金増加に比例した利息を確保できず本業での収益は悪化した状況です。
低金利で収益悪化なら手数料で利益を?
金融機関は、金利収入を補うため、手数料収入を引き上げたいところですが景気の動向に大きく影響すると考え、企業の設備投資や消費の冷え込みが長期化している現状では手数料引き上げは見込んでいません。
結果として、収益確保のため資金運用をこれまでの国債から外国債などのハイリスク・ハイリターン金融商品にシフトする動きが顕著となっています。
さらに、少しでも金利収益が上げられる不動産融資や無担保カードローンに軸足が移っており、「不動産バブル崩壊」や「多重債務者急増」など再び社会問題化にもなりかねない状況です。
米大統領選で地銀の収益に大きな影響
各金融機関では、利ざや減少で収益確保に動きを見せていますが、平成28年11月には米大統領選を機に米国の長期金利が上昇し、特に地銀の収益に大きく影響が出ました。金融庁では、地銀の運用部へ焦点を絞った検査に初めて乗り出す動きを見せるほどです。
日本は、急速な「少子高齢化」と「人口減少」、「中小企業金融円滑化法によるリスケジュール(条件変更)の実質延長措置」、「マイナス金利政策の影響」などのほか、「資金運用」という新たな観点から金融機関の動向を注視しなければならないでしょう。
[2017.7.4更新]