宅地建物取引業法の改正で不動産業界に変革
平成29年、通常国会において中古住宅取引に関する「改正宅地建物取引業法」が成立の見通しとなり、早ければ平成30年度から施行される見込みとなりました。不動産業界の取引に関して大きな変革がもたらされます。
改正案では、中古住宅取引の際に、欧米では慣行となっている第三者によるホームインスペクター(住宅診断士)が、専門的な立場からホームインスペクション(住宅診断)について説明することが義務付けられます。
取引中古住宅の劣化や欠陥状況、改修すべき点や時期、大まかな概算などアドバイスすることが義務づけられます。中古住宅市場に大きな動きが出てきました。
日本は「住宅」と言えば「新築」と信仰
日本は長い年月、新築住宅の信仰が続いており、中古住宅市場の整備が遅れ、現在になって少子高齢化の加速により空き家、空き地問題が問題化されています。
日本は中古住宅に対して「欠陥はないか」「何年住めるのか」「誰が住んでたのか」「隣は誰が住んでるのか」など、懸念が多く敬遠しがちでした。
宅地建物取引業法の改正によって、これらの懸念は全て払拭させるのが国土交通省が推し進める新しいデータベースの整備です。
現在、ネットで公開する「不動産取引価格情報土地総合情報システム」では数的に不十分。また、不動産業者間物件情報ネットワークのレインズ(REINS:Real Estate Infomation Network)の中身は、不動産広告の物件概要にすぎず、中古住宅購入希望者のニーズに十分応えていないのが現状です。
中古住宅にまつわる全情報を一元化
国土交通省では、中古住宅にまつわるありとあらゆる情報を収集・集約し、新たなシステム構築作りに動き出しています。
都市計画情報などは市区町村役場、上下水道などインフラ情報は上下水道局、登記情報は法務局などの情報を一元化。
さらに、過去の取引の履歴や成約時点の価格、住宅の履歴情報、周辺インフラ状況、公共施設の存在や、中古住宅周辺の取引価格情報に加え、災害、浸水情報に到るまでデータベース化するとしています。
現在、金融業界で進んでいるIT(情報技術)を活用したフィンテック(FinTech)に続き、リアルエステートテック(Real Estate Tech)が動き出しいており、不動産の売買・賃貸契約などに新たな仕組みを生み出し、従来の慣行を変革しています。
新システム、すでに4都市で試験運用中
すでに、新しいデータベースは、試作品として日本ユニシスがプロトタイプを構築しており、現在、横浜市、静岡市、大阪市、福岡市で試験運用中です。平成29年度には全国に拡大される見込みです。
新しいデータベースの活用や、人工的にコンピューター上で人間同様の知能を実現させるAI(Artificial Intelligence:人工知能)の進展で調査や書類収集・書類作成がクリック1つで用意できるようになり、人手の効率化で仲介手数料なども大幅な下落が見込まれます。
安倍政権が勧める中古住宅市場の活性化。「中古住宅はよくわからない」から透明化する時代に抜け出す可能性が高くなってきました。
[2017.5.30更新]