中小向け貸出金の伸び率2.1%増、リスク少ない公共向けは5.3%増
国内金融機関112行の平成28年9月中間期の貸出金のうち、中小企業向けの貸出残高は293兆5,966億円と前年同期を2.1%上回りました。伸び率では地方公共向けから同3.2%を下回ったものの、中小企業向けは平成24年9月期以降、5年連続で増加しています。112行のうち全体の90.1%に当たる101行が貸出を伸ばしました。
112行の平成28年9月中間期の総貸出金残高は、431兆498億円。このうち中小企業向けが全体の構成比68.11%、地方公共向けは9月中間期では過去最大の6.67%を更新。それぞれ前年同期を上回りました。
日銀マイナス金利政策で、中小は借り換え資金ニーズが中心
平成28年9月中間期は、日銀のマイナス金利政策により金融機関同士の低金利競争が激化。中小企業向け融資の増加は他行からの借り換えが中心となっています。中小企業の新たな資金ニーズが鈍い一方、倒産リスクの低い地方公共向けへの貸出が伸びていることが鮮明となりました。
中小企業向けへの資金ニーズは、平成21年12月に金融機関への返済条件の変更が適用された中小企業金融円滑化法の施行により、平成22年9月期に比べ貸出比率は1.96%縮小しています。中小企業の資金ニーズの鈍さが目立ちます。
スルガ銀行、中小向け貸出比率トップ
中小企業向け貸出比率では、スルガ銀行が96.1%と前年から0.8%増でトップ。南日本銀行が94.0%、関西アーバン銀行が93.4%、大正銀行が93.3%、静岡中央銀行が92.7%と続きます。
本店所在地の地区別で見ると、中小企業向け貸出残高は東京を除く9地区で前年同期を上回っています。増加率では、中国の6.6%をトップに九州5.8%、東北4.39%、中部4.36%と続きました。
金融庁では、金融機関に対し企業の「事業性評価」に基づく貸出を促しており、保証協会や担保、保証人に依存しない貸出を要請していますが、中小企業の資金ニーズが鈍いだけでなく、金融機関のリスクを回避する姿勢も変化が見られません。
全国116行の預貯金、初の700兆円超え
全国銀行協会は平成29年4月11日、平成28年度末の全国116行の預金・貸出金を発表。実質預金残高は、前年度末から4.5%増の709兆9,986億円と初の700兆円超え。日銀の金融緩和政策の中、運用先を無くした資金が流入しています。
平成29年に入り、「三重・第三銀行」や「近畿大阪・関西アーバン・みなと銀行」、「北越・第四銀行」が相次いで経営統合を発表。中小企業の新たな資金ニーズに答えられる貸出ができるか存在感が問われています。
[2017.4.28更新]