中小企業経営者の年齢は66歳、20年で20歳老化
平成32年にかけ、中小企業の経営者が大量に引退する時代を迎えます。経営者の年齢をみると平成7年には47歳がピークとなっていましたが、平成27年には66歳と大幅な年齢差が浮き彫りとなりました。これまでも事業承継が進んでいなかったことがうかがえます。
「自分の代で事業を止める」経営者は5割
日本政策金融公庫の「中小企業の事業承継に関するインターネット調査」によると、後継者は「本人も承諾し決まっている」が全体のわずか12.4%、「決まっていない」が21.8%と応え、「自分の代で止める」が50.0%と廃業を予定する経営者が半数となりました。
廃業予定の業種をみると、「専門・技術サービス業」が16.5%、「その他サービス業」15.2%、「建設業」12.1%と続き、規模では小規模事業者が多くを占めています。廃業予定企業の業績は「良い」「やや良い」が30.6%に上り、その技術や商品力などを見捨てるには惜しい限りです。
廃業ラッシュは技術・ノウハウの損失
今後、廃業が増加した場合、世代交代による事業の拡大や変革、活性化は期待できないほか、雇用も維持できなくなり長年培ってきた技術やノウハウが失われてしまう可能性があります。
中小企業庁では、事業承継を円滑に行うため、平成28年12月5日、「事業承継ガイドライン」を10年ぶりに改訂。60歳以上の経営者を対象に「事業承継診断」を導入し、金融機関や商工会議所など支援機関が経営者を訪問しニーズを聞き出しています。診断表をもとに、早めに計画的な取り組みを意識するよう促し、事業承継をスムーズにする効果を狙っていますが、その効果はまだ大きくありません。
▼中小企業庁:事業承継ガイドライン
M&Aで技術・ノウハウを存続
一方、ここ数年、M&A(企業の統合・買収)を望む中小企業経営者が増えています。後継者問題が深刻な日本ならではのM&Aですが、シャープなど買収元が中国など海外企業では元も子もありません。
日本では経営問題を第三者である金融機関やコンサルタントなど専門家に相談する文化は根付いておらず、得にM&Aに関しては抵抗があるようです。同業者や地元企業、取引先などは避けて欲しい願望がよく聞かれ、異業種による事業の多角化を目指す企業が買収元になるケースが多くみられます。
中小企業経営者の自力での事業承継が難しいとなれば、第三者の専門家と組んでこれまでの技術・ノウハウを存続させる経営者の変革も必要となっています。
[2017.3.16更新]