企業の休廃業件数:過去最多3万件に迫る
平成28年に企業が休業したり、廃業、解散した件数は2万9,500件、倒産企業の2倍を超え、過去最多を更新する見通しとなりました。企業の休廃業は減少傾向にあったものの、3年ぶりに増加に転じる模様です。
倒産減少、アベノミクス効果?実は亀井法案
一方、企業の倒産件数は、リーマンショック後、前政権の亀井前郵政・金融相による中小企業金融円滑化法のリスケジュール(条件変更)の効果があり平成21年以来、8年連続減少しています。
メディアでは「アベノミクスによる倒産減少」を訴求する報道もありますが、倒産件数が経済指標に現れるのに対し、企業の休廃業は統計に表れず、中小企業などが苦境に立たされていることが実態として浮かんできません。
企業の倒産と廃業は、意味の異なる部分があり、両者が重なる部分もあればそうでない場合もあります。帝国データバンクでは重ならないものを廃業と定義づけています。
企業の休廃業は「隠れ倒産」同様?
いづれにしても倒産、休廃業とも事業が縮小、撤退する訳ですから比較の意味はなく、企業の休廃業は 「隠れ倒産」とも言えるでしょう。
東京商工リサーチによると、グローバル問題や後継者不足も深刻ながら最大の要因は業績悪化とみています。製造業の下請けや孫請け、小売業、建設業の廃業が目立っており、平成29年は本格的に休廃業が増加する危険性が高いとしています。
確かに、その背景には安倍政権と金融庁が平成29年4月以降。金融機関に対し融資先の「事業性評価」の実施を求めています。これは企業の将来性を評価するものですが、裏返せば将来性のない企業に担保があっても融資せず廃業を勧めるのと同様です。
10年後には中小企業経営者が大量に引退
約10年後には中小企業経営者の大量引退時代を迎えます。経営者の高齢化が進む一方、後継者の育成、確保は遅れ気味です。事業承継の課題はしばらく中小企業にのしかかります。
日本政策金融公庫の調査によると、60歳以上の経営者のうち約半数の50%が廃業を予定。なかでも個人事業者の約70%が自分の代で事業を止めるといいます。世代交代できず事業変革と活性化が失われ、技術やノウハウが失われる可能性も高まります。
中小企業庁では、平成28年12月に「事業承継ガイドライン」を10年ぶりに改定しました。商工会や金融機関など支援機関と連携して事業のニーズを掘り起こす取組みが重要となっています。。
[2017.1.27更新]