ソーシャルレンディングが市場拡大の牽引
ネットを介して不特定多数の人々から少額の資金を調達するクラウドファンディングの国内市場が急拡大しています。
矢野経済研究所によると、平成27年度の「購入型」、「寄付型」、「投資型(ファンド型)」、「貸付型(ソーシャルレンディング)」、「株式型」を対象とした国内のクラウドファンディングの市場規模(プロジェクト支援額)は、前年度比68.1%増の363億3,400万円と大幅に増加しています。
社会貢献性や共感性の高いプロジェクトが数多く起案され成立に至りました。マイナス金利時代を反映して高利回りが期待される「貸付型」の拡大(全体の構成比88.7%)が貢献しました。
今年度もクラウドファンディング拡大を予測
平成27年度のクラウドファンディングの市場規模を類型別でみると、「貸付型」が約332億円、次いで「購入型」が約32億円、「投資型」が約6億円と続きます。
平成28年度の国内クラウドファンディング市場規模は、活用効果の浸透や事業拡大のための継続利用、プロジェクト案件の達成数の増加を見込んで前年度から31.5%増の477億8,700万円と予測されます。
安倍政権の「日本再興戦略」において資金調達の多様化(クラウドファンディング)が提言され、近年急速に認知されてきています。
解散「SMAP」へのメッセージ、新聞広告費4,000万円を調達
平成28年12月末で解散したアイドルグループ「SMAP」に向けて、12月30日の朝日新聞の朝刊でファンからのメッセージが8ページにわたり掲載されました。
この企画は、SMAPファンの3人が感謝のメッセージを伝えようと「SMAP大応援プロジェクト」としクラウドファンディングで起案。「購入型」クラウドファンディングでは、史上最多人数の1万3,000人を超える支援者から約4,000万円の資金を調達。12月30日の朝日新聞朝刊には支援者の氏名やメッセージが掲載されました。
この企画は、12月20日から受付を開始し、当初の目標額は1,000万円でしたがわずか2日間で達成。紙面8ページにはファンの氏名、メッセージを掲載することができました。
独、クラウドファンディングで鉄道開業
クラウドファンディングは、日本だけでなく世界各国で起案されており、ドイツでは世界で初めてクラウドファンディングによる鉄道が平成28年12月26日に運行を開始しました。
鉄道の運営は新興企業のロコモアで開業後に切符と交換できる引換券や、Tシャツ、マグカップなどグッズを販売する「購入型」クラウドファンディングです。
ドイツ鉄道が牛耳る独鉄道業界に風穴を開けたかった人々が支援し1年足らずで60万ユーロ(約7,400万円)を集め開業に至りました。
独シュツットガルトーベルリン間のドイツ鉄道は日に700本運行し、正規運賃は115.90ユーロ(約1万4,000円)。一方、ロコモアは日に1往復ながらも運賃を22ユーロ(約2,700円)に抑えました。
新たな資金調達の選択肢としてクラウドファンディングは年々認知度、支援者数が向上しています。日本ではJR北海道の路線の約半分が赤字と報じられ、廃線を迫られるなどクラウドファンデングにも起案を期待します。
*関連記事:「改正法案成立、新たな資金調達の担い手、株式型クラウドファンディング」[2014.7.17更新]