具体的な政策:中小企業の収益・個人消費の向上
経済産業省は平成28年12月12日、ファイナンス(finance:金融)とIT(Information Technology:情報技術)を融合したフィンテックに関する有識者会合で、中小企業の収益向上や資金調達、個人の消費活動などに役立てる政策案を示しました。
政策目標も具体的に示し、フィンテックの活用を促します。同省では、平成29年夏には成長戦略に盛り込むとしています。
日銀の黒田総裁も、都内の講演でフィンテックは「金融サービスを変革する大きな潜在力を持っている」と述べました。日銀としてフィンテックの健全な発展を支援する姿勢をみせ、金融サービスの利便性や経済活動の活性化に結びつけるよう最大限の貢献をする主旨を示しました。
まずは中小企業のIT化、補助金も用意
経済産業省は、中小企業がフィンテックの活用を容易に利用できるよう、バックオフィスなどのIT導入を促す「IT化投資支援補助金」の支給も成長戦略に盛り込みました。
政策案として、企業の原材料や部品の調達から製造、在庫管理、販売、配送までの全プロセスを連携するサプライチェーンの資金循環速度向上の導入を提唱。企業の資金回収の早さを示し、数値が小さいほど資金繰りが改善していることを中小企業に理解してもらいます。
金融サービスの供給は、フィンテックほか仮想通貨など金融機関などの店舗やATM(Automatic Teller Machine:現金自動預入れ支払い機)の必要性がなくなる時代も遅くはないでしょう。
初の試み:銀行、会計事務所、会計ソフト3者が協業
政策目標としては、中小企業と取引先との金銭のやり取りの期間や財務、会計業務などをクラウドサービスの活用を数値目標に策定します。
平成28年12月19日からは、地銀最大手の横浜銀行とクラウド(Cloud:ネット上のサーバーが提供する)会計ソフト「freee」が協業し、地域の中小企業の資金調達環境を改善し、小規模事業による地域活性化を支援します。
銀行や税理士・会計事務所、クラウド会計ソフト3者が地域の中小企業を支援するのは初の試みです。
新たな金融サービスが始動
フィンテックは、これまでキーワードだけが先行していましたが、平成27年9月には、フィンテックを活用した新しい融資サービスを実施するため、みずほ銀行とソフトバンクが合弁会社を設立することを発表。スマートフォンで融資の申込みから実行まで完結させ、平成29年前半には事業を開始する予定です。
今回の横浜銀行など3者協業により具体的な動きが見え始め、本格的にフィンテックが中小企業にまで普及すれば、日本の金融サービスは5年かからず変革を起こすことでしょう。