地銀大手の常陽銀行と足利銀行が経営統合
茨城県最大手の地方銀行「常陽銀行」と、経営破綻から再建した栃木県最大手の地方銀行「足利銀行」は平成28年10月をめどに経営統合。効率化効果で既存の地盤を固め、巨大市場である首都圏に攻め込む方針を示しました。人口減少が加速する地方圏では、経済が縮小する懸念が大きいとの判断です。
平成27年9月8日には地方銀行大手の横浜銀行と第二地方銀行の東日本銀行が平成28年4月に経営統合が発表。この統合による危機感が今回の統合協議を強く後押ししました。地方銀行の再編圧力が強まっています。
地銀の危機感:人口減少、地域経済衰退,貸出金利競争
両行の経営統合は,将来の人口減少による市場の縮小や地域経済の衰退などへの危機感が強くみえます。融資や住宅ローンなど金融機関同士の貸出金利競争の悪化で経営環境は厳しい状況です。
両行の統合が実現すれば、資産規模全国3位の地方銀行グループとなります。金融庁では,人口減少の対応に再編も含めた中長期的な戦略をつくるよう地方銀行に促しています。
金融庁「金融リポート」地銀の厳しさを表現
金融庁が平成27年7月3日発表した平成26年7月から1年間の金融検査・監督の年間報告書「金融モニタリングリポート」によると、金融緩和や競争激化で地方銀行の厳しさが表現されています。
全地方銀行106行の中核業務である貸出をみると、貸出金利回りは平成23年3月期の1.88%から平成27年3月期には1.4%に低下。この傾向が続けば約8割にあたる89行で平成30年3月期の経常利益は減少。このうち22行は経常利益が半分に落ち込むと試算しています。
金融庁の地銀改善策:「規模の利益」
金融庁の考える地方銀行の経営改善策は、一貫して「規模の利益」。「金融モニタリングリポート」には「独自のビジネスで差別化を図る」とあるものの、再編などにより「規模の利益を指向する経営戦略」が金融庁の掲げる金融政策。その根拠にリポートでは、貸出規模が大きくなるほど効率化が進む傾向が強いことを指摘しています。
バブル崩壊後,不良債権処理に中小企業の切り捨てが横行。アベノミクスが掲げる地方創生の実現に向け地方銀行の再編がどうあるべきか動向が注視されます。
[2015.10.29更新]