ソニーシティ大崎:投資ファンド、機関投資家へ1,111億円で売却
業績低迷によるリストラを進める大手電機メーカー・ソニーは2月28日、財務基盤の強化と今後の成長のため保有する東京・大崎駅前の「ソニーシティ大崎」をJーREIT(不動産投資信託)最大手の日本ビルファンド投資法人と、国内の機関投資家1社に1,111億円で売却。関連費を差引いた1,100億円を確保し、今年度第4四半期に410億円の譲渡益を計上することを発表しました。
同社は、エレクトロニクス部門の不振で、昨年度まで4年連続で赤字に陥っており、不動産の売却で今年3月期の決算で営業利益として計上する見込みです。今年1月には、米国本社が入居するニューヨークのビルを約11億ドル(約980億円)で3月に売却することを発表しています。
5年間のリースバック契約で事業は継続してビルを利用
ソニーが売却した「ソニーシティ大崎」は、平成23年に完成したばかりの地上25階建て地下2階、延べ床面積は12万4,000平方メートルのビルと敷地。大手信託銀行に所有権を移した上で賃貸料などを得る権利を投資ファンドに売却。ソニーは今後5年間、賃貸料を支払い継続してビルを利用します。
同ビルには、テレビ事業や研究開発部門など約5,000人が入居しており、不動産のリースバック契約により事業はそのまま継続して利用することとなります。同社では、資産売却により手元資金を確保、業績回復を目指します。
本社売却でも格付会社は「ソニーの信用力上、ポジティブ」
一方、米国本社はニューヨークのマンハッタンの中央部にある36階建ての高層ビル。売却先は米不動産のチェトリット・グループを中心としたSPC(Special Purpose Company:特別目的会社)。ソニーとリースバック契約を結び最長3年間、ソニーグループのオフィスは継続して利用します。
米国本社売却の発表を受け、格付会社のムーディーズ・ジャパンは1月21日、「ソニーの信用力上、ポジティブ」とコメントを発表。市場では、企業価値の向上とも受け取れる好意的な反応を見せています。
リースバック:企業のバランスシートをスリム化する効果
大手企業ではリーマンショック以降、リストラの一環として本社ビルなど保有する不動産を売却。賃貸オフィスへ移転したり、リースバック契約による賃貸方式で利用を続ける傾向が進んでいます。さらに、東日本大震災を受け、最先端の耐震・免震オフィスが注目され、移転する動きも見られます。
不動産リースバックは、保有する不動産を売却し資金を調達。リースバック契約することで賃貸方式で今のままオフィスの利用が可能です。企業の有利子負債前返済・圧縮によりバランスシートをスリム化することも可能で、純資産利益率を向上させる経営にも移行ができ、健全な資金繰り対策としての効果も生まれます。
[2013.3.6更新]