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リースバック契約の誤解と実態
相次ぐ企業の本社ビル売却!リースバック契約の誤解と実態
エイベックスや電通、JT、NECも自社ビル売却、リースバック契約
ここ数年で企業の自社ビルの売却が活発となっており、令和2年12月には音楽配信大手のエイベックスが自社ビルを売却することがメディアで報じられ、3年1月には広告代理店大手の電通が自社ビル売却の方向で調整していることも判明しています。
令和3年1月には、輸送・流通管理大手の日通が本社ビルを売却し、新本社を東京・千代田区に建設・移転することが報じられました。
こうした自社ビル売却は、令和2年10月頃よりJT本社ビルやNECの相模原事業所の売却などの事例から、その兆候は現れていました。
日通の本社ビルの売却はリースバック契約とは異なる
ただ、日通の本社ビル売却の場合は、新天地に新たな本社自社ビルを建設するため、他事例と分けて考える必要があります。
また、人材派遣大手のパソナの淡路島移転など郊外化への動きや、リモートワーク、在宅勤務への転換など様々な動きもあり、自社ビルの売却と
リースバック契約との誤解を生じる経営者もいます。
新型コロナウィルスにより、大きく労働市場が変革し、ステータスであった自社ビルの売却や、上場企業の破綻、年功序列、終身雇用の崩壊など今後もその動向が注目されています。
自社ビル売却=退出、在宅勤務へシフトとは違う点
エイベックスや電通、NECなどは自社ビルを売却するものの、ビルからは退去するわけでなく、オフィスを引き払いリモートワーク、在宅勤務に舵を切ったというイメージは誤りです。
これら企業は、自社ビルを第三者の投資家やファンドなどへ物件を売却し、
リースバック契約によって売却先と貸借契約を結び、自社ビルをこれまで通り継続利用することが可能であり、売却額が手元資金として確保できるという大きなメリットがあります。
一般的に、今後もビルを使用続けるのなら売却して家賃を払うより家賃ゼロのまま運営した方が合理的なのではと言う経営者も多くいます。
ROAの向上、ROEの改善に期待されるリースバック契約
リースバック契約のメリットとしては、会計上のメリットも多く、流動性の低い不動産を流動性の高い現金に換価することで借入金がある場合には返済して自己資本率を高めるなど、ROA(Return on Asstts:総資産利益率)の向上が期待できます。
売却損が発生する場合には、他の利益と相殺して決算対応や節税効果も十分期待できるでしょう。
さらに、売却で得た資金運用が自社ビルの期待運用利回りを上回る形で活用できればROE(Return On Equity:株主資本利益率)の改善効果も期待できます。
これまで、企業は借入金返済に資金繰りが逼迫する状況に
リスケジュール(条件変更)が常識的になってきた中、今後はコロナ禍を機に、
リースバック契約が増加する予測があります。
[2021.02.12更新]