企業の人材不足・失職解消に「出向」案!労働移動支援に軸足
企業の雇用維持から人材ニーズある企業へ出向
菅政権は雇用政策の軸足を、これまで働いてきた企業での雇用維持から、人手不足の業種への移動支援に移り始めるとの考えを示しました。
令和2年1月より、
雇用調整助成金の特例措置を段階的に縮小するため、業種を超えた
出向や新たな技術を習得することを後押しし、失業なき労働移動を目指します。
総務省が令和2年9月1日発表した労働力調査の完全失業率では7月末現在2.9%と、4月末の2.6%から0.3%上昇し、新型コロナウィルスの影響によるものと見ています。
企業が内部に抱える休業者も一時600万人近くに膨らみました。
雇用調整助成金は期限あり
企業は、これまで従業員に対し、休業手当を支払う企業を支援するため、
雇用調整助成金の特例措置で雇用維持を守ってきましたが、人手不足の業種への労働力移動を妨げるとの指摘も出ていました。
このため、厚生労働省は令和2年9月25日、令和3年度予算の概算要求に労働力移動を支援するメニューを盛り込むことを決めました。
出向を促す仕組みとして、新型コロナウィルスの影響で経営が厳しい宿泊・飲食業などの従業員を産業雇用安定センターへ登録し、人手不足である物流やスーパー、介護などへ人材をマッチングさせ、人材移動を行うものです。
国、都道府県の職業能力開発施設、NPO教育訓練機関での教育費用を厚労省負担
そのため、職を一時的に失った人が無料で技術を学び、すぐに再就職できるよう、国と都道府県の職業能力開発施設やNPO(Nonprofit Organization:非営利組織)が運営する教育訓練機関の教育費用を国が負担します。
要求額は、厚生労働省が900億円超えとし、企業間の
出向・マッチングに44億円、企業の業種や職種転換を都道府県への支援として68億円、地方転職を希望する人への職業紹介として8億7,000万円を就労支援策とし、菅政権が予算案を決める令和2年末の段階で積み増すことも可能にしました。
人手不足の介護職、有効求人倍率は3.99%に
厳しい情勢が続く雇用状況も、業種別にばらつきが多く、宿泊・飲食業などでは就業者数の落ち込みが続く一方、人手不足が常態化する介護の有効求人倍率は令和2年7月に3.99倍に達しました。
一方、自宅から近いスーパーなど小売店や、インターネット通販への消費シフトによりスーパーや物流での人材ニーズは高く、在宅業務を支えるデジタル人材のニーズでも情報通信業の7月の就業者数は前年水準を大きく上回っています。
雇用調整助成金による支援を急速に縮小すれば失業率は急上昇し、社会不安も招く可能性も高いため、雇用情勢や労働力移動の状況を見ながら慎重に進める必要があると考えられます。
[2020.10.2更新]