生保、損保など機関投資家へ債券を発行し資金調達
広島県で計画されているメガソーラー(大規模太陽光発電所)が、国内では初めて生命保険や損害保険会社などの機関投資家向けに債券を発行し資金調達して建設されます。大規模な再生可能エネルギー設備などの建設は通常、銀行などがプロジェクト・ファイナンスとして融資を行うのが主流。小規模な発電設備などの建設では、少数から資金を募る私募ファンドにより資金を調達することはありましたが、機関投資家を対象に大規模な債権での調達は国内に事例がなく、日本で初となります。
収益性より安定性が重視されるプロジェクト・ボンド
資金を調達するのは東広島市の建設業、栗本ホールディングス。同社の資金調達法は、発電事業を行うために必要な資金を調達する目的で社債を発行するプロジェクト・ボンド方式。発行される社債は、通常の社債と異なり、返済原資は事業から得られる収益に限定されます。
投資家は、同社が発行する社債(ボンド)の販売・管理を行うゴールドマン・サックスが管理する口座への資金の払い込みを通じて資金が提供されます。プロジェクト・ボンドは、必要不可欠な安定性の高いインフラ事業から得られる長期の収益が返済原資となり、収益性よりも安定性が重視されています。
6億2,000万円を調達、償還期間18年で年率2%
メガソーラーの総事業費は約7億8,000万円。栗本ホールディングスは、このうちの約8割に当る6億2,000万円をプロジェクト・ボンドで調達。債券の償還期間は18年で利率は年2%を目指し、来年1月〜3月中の発行を予定しています。
機関投資家などからの資金調達は、借り手にとっては変動金利での銀行からの融資以外の調達の巾が広がり、長期金利の変動リスクもヘッジすることが可能。取引金融機関からの融資が難しい場合に新たな資金調達のチャンネルが確保されます。
格付会社や管理会社など普及に整備が必要
海外におけるプロジェクト・ボンドの市場は、本格的な債券発行が増えた20年ほど前で発行規模で約1兆円。リーマン・ショック前に発行は急増しましたが、世界的金融危機の影響で発行は一時ストップ。格付会社によれば徐々に市場は回復となっています。
プロジェクト・ボンドの発行には、格付会社や管理会社などが必要となり、リスクの高い案件には保険などの補償も求められます。日本のプロジェクト・ボンドの普及には、まだまだ市場の整備が必要となりますが、企業にとっては新たな資金の調達先としてインフラ事業など新たな計画増加の後押しとなりそうです。
[2012.12.4更新]