家計の総資産の7割が不動産、高齢者の所有者も増加
国土交通省は11月14日、第1回目の「世代間資産移転の促進に関する検討会」を開き、相続の問題点や資産価値の捉え方、資産移転の対象・手法などの意見交換が行われました。
家計が所有する総資産のうち、不動産資産の割合は約7割と引き続き高い水準を維持。同省の土地基本調査によるとここ数年、35〜50歳未満の不動産所有者数が大きく低下する一方、相続や贈与で不動産を取得する年齢が上昇していることに偏りがあることを指摘。さらに現住居以外の敷地については、平成20年時点と過去の面積を比較すると、75歳以上で大きく増加し15年で約3倍となった一方、25〜55歳未満では大きく減少しました。不動産所有者の高齢化が浮き彫りとなっています。
教育や不動産資金需要:高齢世代より子育て世代への資産移転が理想
検討会では、土地などの不動産は資産として捉え、経済成長に応じ転換するべきであるものの、現在の低成長期では資源として最大限の活用が必要としています。さらに、相続だけでの資産承継には限界があり、資産を積極的に移転・取得することが検討されます。
本格的な少子高齢化社会を迎え、不動産などの相続は高齢者間で行われ、資産を承継したときには既に子育ても終えていることが多くなっています。本来であればマイホームの購入や教育など子育て世代への資産移転をスムーズに促すことが理想とされます。
法改正でSPCが相続不動産を買取り再生も検討
日本の不動産は、放置した方がコストが安いため空き家など不在地主が問題となっており、どれだけ不動産を流動化させることができるかが課題となっています。国土交通省では、不動産情報を充実させ資産移転のマッチングに向け、ネットなどを活用し情報をオープンにすることなどが議論されています。
同省では、高齢者が所有する不動産を若年世代に移管し、有効活用するために対象となる不動産の特定や具体的な施策などについて今年度中に検討。金融庁とも連携し、不動産特定共同事業法を改正し、民間資金を調達したSPC(特別目的会社)が不動産を買取り、再生工事を行えるようにすることも検討としています。
不動産を活用するという高齢者の意識不足も課題に
地方を中心に人口の高齢化が進み、土地などの不動産が有効利用されずに中心市街地が衰退する光景は広がりを見せます。これらの資産は建物の老朽化や、高齢者が不動産を活用するという意識付けが不足していることにも課題が残ります。過疎化が進む地方では、若年層を迎えるためにも不動産のみならず、子供の教育や雇用なども一体で考えなければならないでしょう。
今年5月に行われた内閣府の成長ファイナンス推進会議の「今後検討する資金供給源の拡大」で「世代間資産移転促進」が明記され半年以上、ようやく具体策に向けた検討会が動きだしました。
[2012.12.3更新]