公的資金投入:現状の対象は銀行や信用金庫だけ
金融庁は11月12日、リーマン・ショックなど大規模な金融危機の際に、金融機関が連鎖破綻することを防ぐための危機対応策の原案を金融審議会に示しました。現状では、政府保証を含む公的資金を投入する対象は、銀行や信用金庫などに限られていますが、同庁では証券会社や保険会社など金融業全体にセーフティネットを拡大させるとしてします。
米国ではリーマン・ショック時に、ゴールドマン・サックスが銀行持ち株会社に転換し公的資金を受けました。金融システムにおける日本の証券会社、保険会社の重要度は世界的に高まっており、「もしものとき」に備え公的資金が投入できるよう規制を見直す考えです。
山一証券破綻でも世界金融不安防いだ、預金保険機構版「特別融資」を新設
原案では、証券・保険会社が破綻危機となった場合に、債務超過でないことを条件に預金保険機構が金融商品を買取り、公的資金を投入。公的資金に損失が出た場合には、事後的に金融業界に負担を求める方針です。証券・保険会社では、デリバティブ(金融派生商品)取引も行っており、破綻となれば他の金融機関への影響が懸念されていました。
バブル崩壊時には、金融危機により大手証券会社の山一証券が破綻の危機になった際、日銀が迅速に特別融資を供給し日本発の世界同時金融不安を防ぎました。預金保険機構に同様の機能を持たせ、より機動的な運用が可能となります。
公的資金投入で金融機関の機能正常化はIMFも同調
バブル崩壊後、不良債権の増加など金融機関の体力が低下し再編、破綻が相次ぎ、国内外で日本の金融システム全体の信頼が揺らぎました。金融機関では、金融機能の低下により貸し渋りが起きるなど長引く景気低迷の要因にもなりました。公的資金の投入は、金融機関の体力の回復や金融機能正常化に向け、預金保険機構がデリバティブなど金融商品を公的資金で買取り、解約など混乱を排除。平成10年の早期健全化法の制定により同機構が役割りを担ってきました。
IMF(国際通貨基金)が今年8月に公表した「金融セクター評価プログラム」によると、金融機関の実効的な破綻処理の枠組みは「銀行同様、ノンバンクにも拡張されるべき」とありました。
りそなHD純利益37%増:公的資金の返済「前倒しで返したい」
りそなホールディングスは11月9日、今年上半期(4月〜9月)の決算を発表。連結純利益は前年同期比37%増の1,756億円。平成28年3月末までに公的資金返済の原資となる利益剰余金を6,000億円上積みし、1兆4,000億円とする方針を示しました。同行では平成15年に1兆9,600億円の公的資金を受けましたが、28年をめどに残る8,716億円のうち4,500億円を返済する予定ですが、同行では「前倒しで返したい」とコメント。
りそなホールディングスでは、傘下銀行の営業時間延長や賃金・企業年金削減など企業努力で、メガバンクとは一戦を画し真のリテールバンクを目指し邁進しました。破綻危機による証券・保険会社への公的資金投入は、世界的金融不安を防ぎ、本来の金融事業の健全化も図られるでしょう。
[2012.11.13更新]