地銀の不良債権処理費用が2倍に増加!上場地銀77行中55行が減益・赤字
地銀、融資先の中小企業の倒産、廃業を懸念?
三菱UFJモルガン・スタンレー証券が令和元年11月23日にまとめた、東京証券取引所などに上場する全国の地銀77行の令和元年9月期の中間決算で、新たに計上した
不良債権処理費用は1,058億円と前年同期から2倍に膨れ上がったことが判明しました。
全国の地銀では、融資先の中小企業などの経営悪化や、倒産・廃業する可能性があるためで中小企業の不振は多くの地銀の収益を減少させる要因となっています。
平成20年のリーマン・ショック後に、地域の中小企業や小規模事業者などを支援してきた地銀の77行の内、約7割を占める55行が最終減益や赤字となり、より一層の地銀改革の必要性が高まっています。
倒産に控え貸倒引当金を負担する金融機関
不良債権処理費用は、銀行など金融機関が業績の悪化した融資先が経営破綻や倒産・廃業に備えて
貸倒引当金を積む必要があり、融資残高額の回収が不可能となった場合に発生する費用や、債権回収を放棄した場合の損失などで処理する損失費用です。
会計処理上は損失として計上され、融資先企業の経営が悪化すれば必要となる
貸倒引当金も増え、増加傾向が続けば処理費用も増えるため、不良債権増加による地銀の財務悪化を防ぐために融資体制を厳密化する傾向にも繋がっています。
中小企業支援のリスケジュール後の企業倒産も増加傾向
この背景には、日銀の異次元金融緩和による低金利政策や、リーマン・ショック後の平成21年12月に施行された中小企業金融円滑化法のリスケジュール(条件変更)により中小企業をこれまで支援してきた経緯があります。
帝国データバンクによると、リスケジュールを受けたものの、事業が再建できずに倒産した企業件数は平成30年度に480件と3年連続で増加傾向にあります。
平成31年4月〜令和元年9月期の上半期累計でも255件と前年度を上回るペースで、後継者不在で事業承継を断念するケースが目立っています。
3メガバンクは安泰でも世界経済低迷で先行きは・・
一方、3メガバンクでは、
不良債権処理費用は収益の下押し要因となっており、3メガバンク合計の平成31年4月〜令和元年9月期の与信費用は937億円と、1,427億円の戻り収益が生じた前年同期から増加に転じています。
これは、シャープや東芝など大企業の融資先の業績回復が一巡したことで
貸倒引当金の戻りが大幅に減少したと見られます。
ただ、世界的な経済低迷によって大企業においても経営悪化が増加すれば、メガバンクでも
貸倒引当金が膨らむ可能性があり、地銀にとっても大きな転換期を迎え、金融庁などが支援・後押しする再編や統合も今後、早急な対策が望まれます。
[2019.12.3更新]