金融庁:中小支援で地域経済の活性化狙う
金融庁は10月31日の金融審議会で、銀行による企業への出資比率を5%以下に規制する「5%ルール」を緩和し、対象を中堅・中小企業に絞る原案を正式に示しました。銀行では、現在でも投資子会社を通じて例外的に5%を超える出資も可能ですが、中堅・中小企業に限り銀行全体で10〜20%未満の出資ができるようにして、市中へ資金を流入し、地域経済の活性化を目指す考えです。
同庁では、来年3月に終了するモラトリアム(中小企業金融円滑化)法が終了することをうけ、出資規制の緩和で銀行が中小企業やベンチャー企業支援へ動き出しています。
返済の負担軽減、既存の融資も株式に転換
銀行による出資の規制緩和は、10月10日の金融審議会で議論がはじまり出資規制の上限を検討。上限を20%以上とした場合、出資先の企業が金融機関の持ち分法適用会社となり、業績の一部が金融機関の連結決算に反映されるため抑えられました。現在、10%まで企業の株式を持てる信用金庫や信用組合への規制は据え置く方針です。
金融庁では、規制緩和により地方銀行など融資に加え出資を拡大したり、既存の融資を株式に転換するなど企業支援が柔軟になると期待します。
金融審議会:地域金融機関再編への規制緩和?
政府は日本再生戦略にも「金融機関による資本性資金の供給策の検討」と、出資規制の見直しが盛り込まれています。モラトリアム法終了を迎えるにあたり、金融機関が中小企業への資金供給を促す効果を狙います。特にベンチャー企業の育成では、5%ルールでは充分な起業支援が実施できないとの指摘もありました。
ただし、金融機関は経営体力の劣る中小企業への関与を強めれば、リスクの拡大も懸念されます。金融審議会では、金融機関のリスク許容量を拡大する上でも地域の金融機関の統合、再編は有効な手段と言及しています。
衆院解散、新政権になれば法案の先行きは不透明
5%ルールの規制緩和は、中小企業などへ資金供給力を高め支援策としてポスト・モラトリアム法となるか実効性はまだ不透明。中小企業への資金調達が円滑となり救済策か、地域の金融機関のリスク、再編を促す契機となるか慎重な議論が求められます。
政府は、平成25年度の通常国会へ法案提出を目指すものの、衆院解散、新政権なども未知数。モラトリアム法終了まで時間が迫るばかりの状況です。
[2012.11.5更新]