株式2/3を売却で約7兆円が震災復興財源に
日本郵政が平成27年秋までに株式を上場する方針を固めたことが10月25日明らかになりました。改正郵政民営法に基づき、政府が保有する全株式の2/3を段階的に売却。売却収入は東日本大震災の復興財源に充てられます。下地郵政民営化相は26日、日本郵政の上場準備に着手し、3年以内の上場を目指す考えを示しました。
日本郵政の連結純資産は約11兆円とみられ、単純に計算しても2/3を売却で最大約7兆円の売却収入が震災復興に充てられます。
ゆうちょ銀行、かんぽ生命の株式売却は先送り
日本郵政では、政府が具体的な株式上場計画を示す代わりに、ゆうちょ銀行やかんぽ生命保険を来年4月から住宅ローンなど新規業務に参入させる考えです。政府は、この金融2社の株式売却は、日本郵政株が半分程度売却されるまで判断を先送りするとしています。民間金融業界では政府保証で民業圧迫と反発。金融2社の売却先送りに理解が得られるかは不透明となっています。
日本郵政では、郵便事業の赤字を金融2社で穴埋めしているだけに今後は、郵政株売却に向け郵便事業の収益の改善が求められます。
株式上場:郵政株、どこの国の誰が購入するか
郵便事業では、不採算店舗の閉鎖により過疎地などの利便性や、それに伴う郵便値上がりなどにも懸念が残ります。また、この先3年での上場で国内外の投資家や金融機関、企業など株式購入により、日本郵政の経営にも参入。日本の国債を運用する日本郵政の投資先も変わる可能性も少なくはありません。
ゆうちょ銀行の預金残高は約175兆円と民間のメガバンクを大きく上回り、かんぽ保険の保険契約準備金は約92兆円と合わせて267兆円。米国が主導するTPP(環太平洋経済連携協定)では、農業や自動車のほかにも金融サービスが自由貿易の対象となっています。
改正郵政民営化法:金融2社株「処分」から「処分を目指す」へ
郵政民営化は、小泉政権時に金融2社は政府は一切株を持たない「完全民営化」。郵便事業は過疎地対策のために一定株を保有する「民営化」となっていました。それが今年4月の改正郵政民営化法成立により、金融2社株は「期限内に処分」から「できるだけ早く処分を目指す」と努力規定に改められました。
金融2社の新事業参入では政府の株保有で「暗黙の政府保証」と民間金融機関から反発。さらにTPPでは「金融市場の解放」と「完全民営化」を要求してきます。「処分を目指す」の意味がいづれつじつまが合わなくなる懸念が残ります。
[2012.10.29更新]