復興特需:仙台市へ建設業者流入、人口も震災前から増加
東日本大震災から1年半が過ぎ、被災地仙台の今年9月1日現在の人口は前月から1,134人増加し106万263人と、初めて106万人を超えました。前月を上回るのは5ケ月連続で昨年、震災前の3月1日から1万3,526人増えました。仙台市を中心に復興特需など建設業者の流入でマンションなどの空室率も仙台市全体で約6%と大幅に改善されています。
JーREIT(上場不動産投資信託)による東北への投資も、今年1月〜7月までに前年同期から約6倍に増加。投資額は114億円に達し、仙台駅周辺から離れた立地でも建設業者が一棟借り上げるなどほぼ満室状態。投資利回りも2〜3%上昇していると言われて不動産バブル状態となっています。
仙台市、3年後には東西に伸びる地下鉄開通、不動産投資の追い風に
同じ被災地でも福島や岩手はもともと投資物件が少ないため大きな変化は見られません。仙台市は、平成27年には東西に伸びる地下鉄も開業するなど不動産投資では追い風も吹きます。さらに30数年前に起きた宮城県沖地震などの影響で投資物件を手放した投資家も多く見られ、優良物件も出回っていると見られます。
今後は、消費増税案も成立し、収益物件への駆け込み需要で売買が活発化となる予測も立ちますが、復興特需はいつまでも続きません。2〜3年後には復興住宅やマンションが建設され、空室率が数年かけもとの水準に戻る可能性も充分考えられます。
住宅は高台2ケタ上昇、進まぬ移転に自治体は被災住宅買取り
不動産投資に活況は見られるものの、被災地の住宅地では津波被害への不安を解消する高台の宅地が2ケタ上昇するなど懸念も残ります。自治体では、進まぬ集団高台移転に津波など住宅を失った被災者の二重ローン対策に金融機関へ既存住宅ローンの抵当権放棄を要請。10月12日には金融機関と金融庁が「被災地の特例措置」として合意の見通しがたっています。
自治体では、被災住宅の買取が進まなければ公共施設や農地などの災害危険区域の整備が進みません。これ以上の復興の遅れを止めるためにも被災者の住宅対策を急ぎます。
沿岸部被災住宅:人手不足で基礎の撤去実施率は1割強
自治体では、住宅の新築、増築を禁止する災害危険区域を指定しており、その敷地は9,000ヘクタールを超えるとされています。高台や内陸部に移転が必要な被災者は約3万世帯に迫り、自治体との地域設定を巡り住民と意見が合わず移転が進まぬ地域も目立ちます。
沿岸部の住宅地では、建設業者不足により依然住宅の基礎の撤去が進まず判断を迷う被災者も見られます。宮城県気仙沼市では、市の助成で撤去を依頼した被災住宅は1,332件で完了したのはわずか12.7%でした。同じ宮城県でも不動産バブル、高台移転、住宅買取など様々な一面をのぞかせます。
[2012.10.18更新]