国交省調査:高台移転で山林の取引急増
国土交通省は、東日本大震災で被災した太平洋沿岸地域の登記簿データを元に、12市町村で民間の土地取引状況を調査。今年1月〜6月の土地取引件数は1,229件と、震災前、平成22年同期571件の約2倍強であることが判明しました。
地目別では、山林の取引が大半を占めており、住居の高台移転など平地の少ない三陸沿岸の復興状況が反映されています。同省では、個人や法人による土地取引の件数や購入した法人の業種、地目などについて分析を続けています。
高台土地取引:自治体、政府の対応遅れに懸念
国土交通省が9月に発表した基準地価では、津波によって被害を受けた沿岸部や原発事故の影響が大きい福島県沿岸で下落が目立ちます。一方、被災者の移転需要で高台はは大幅に上昇。住宅地では、岩手県陸前高田市の高台などが急上昇し、全国上昇率トップ10は岩手、宮城県が独占するなど地価の二極化が強まっています。
高台の地価上昇は、住宅再建に悪影響を及ぼす可能性が大きく、限られた宅地に需要の集中で値上がりが進めば、自治体など復興に必要な用地買収の妨げにもなります。自治体や政府の対応が遅れれば民間業者が土地買収を先行する可能性もあります。
中学校高台移転候補:民間は市の予算の10倍で買収
陸前高田市は、今年6月に被災した3つの中学校の統廃合により、3校の中間地点に当る高台の山林と田畑を建設予定地に決定。しかし、市は買収予定であった用地の一部は、既に住宅メーカーが地権者への交渉を進めており、買収価格は市の予算の約10倍。復興への影響を懸念する声も高まります。
復興が進み高台では土地取引が増加するなか、被災地のみならず地域づくりにも支障を及ぼす「被災地高台バブル」だけは避けなければなりません。高台の買い占めなど、国土利用計画法の「監視区域」指定など、自治体、政府ともに検討するべきです。
高台買い占めよりも総選挙が第一優先?
震災の被災地に限らず、政府の南海トラフ巨大地震の被害状況の公表により、津波被害や耐震性、地盤の情報など「住居の安全性」は不動産取引の新たな評価基準となりました。震災後、国土交通省の復興計画の策定では、沿岸部の住宅や公共施設、工場など被災地高台の土地を投機目的の買い占めから防ぐとしたものの、現実に民間業者に先を越されているのが現状です。
総選挙が第一優先の政策となったいま、早急に毅然とした対応で復興の妨げとなる不動産取引に力を注がなければなりません。
[2012.10.9更新]