楽天、個人の決済状況から信用力を判断、融資へ
インターネット上の膨大なデータを企業活動に生かす「データエコノミー」が、企業・個人向け融資の手法を変革する動きがあります。
ネット通販大手でありながら現在では金融事業も行う楽天などIT(Information Technology:情報技術)企業は、日々の取引決済や、取引額、口コミデータなど膨大なデータからAI(Artificial Intelligence:人工知能)を活用し、個人の信用力を判断して銀行など金融機関を介さずに融資する事業に参入し始めています。
起業まもない企業や中小企業、小規模事業者など、運転資金や設備投資などの資金ニーズに、金融機関では、手元資金や確実な事業計画が必要となり、融資されない確率は高いものの、ネットでの個人情報を把握するIT企業であればデータで信用力を判断できるとしています。
銀行、カードローンはPR自粛では?
銀行など金融機関にとっては新たな競合に備えることになりますが、相変わらず銀行カードローンを薦めるのが実態。
銀行カードローンは、金融庁より、過剰な融資と指摘され、全国銀行協会では宣伝・広告の自粛を示しましたが、平成30年7月現在、テレビにはメガバンク2行がタレントを起用し、テレビで銀行カードローンの利便性をアピールしているのが現状です。
米ネット通販大手のアマゾンも平成23年から出店社への融資を行なっており、英国や日本でも拡大し、平成29年時点で約2万社が融資を受け、融資額は累計で30億ドル(約3,300億円)に上ります。
メガバンクも新たな融資法を模索
銀行勢も地盤の切り崩しを避けようと、みずほ銀行はソフトバンクと連携してAIを活用し、ソフトバンクの通話料金の決済データなどから信用力を判断し、個人向けに融資する事業を始めました。
三菱UFJ銀行は、AIの開発会社に出資し、平成31年度中に中小企業向けのオンライン融資を始める計画です。
データによる個人の信用力の見極めは、どこまで正確なのかは未知数な部分も残りますが、これは銀行員の目利きにも言えることです。
日本の銀行は大企業の融資に偏り、中小企業や若い企業には厳しい日本特有の問題があり、新たな異業種参入で見直しが期待されます。
地銀、第二地銀、信金、生き残りには?
ただ、地銀や第二地銀、信金などにとっては、このような新たな事業に進む余裕もないのが実態で、金融庁は平成29年秋以降。地域の金融機関において経営陣と対話、再編やM&A(Mergers and Acquisitions:企業の合併・買収)を促しますが、地域金融機関が集約することで独擅場となり公正取引委員会の審査にも時間がかかり、暗礁に乗り上げています。
国民にとっては日銀の異次元金融緩和で住宅ローンが低金利で利用できるなどメリットとなりますが、金融機関にとっっては利ざやも縮小し、死活問題であり、八方塞がり状態となっています。