国会32日延長、なぜ今、サービサー法改正なのか
平成30年6月25日、安倍首相らが参加した参院予算委員会において、国会会期を7月22日まで、32日間延長することが決まりました。
会期延長は与党主導で行われ、最重要法案である「働き方改革関連法案」や「IR(Integrated Resorts:カジノを含む統合リゾート施設)整備法案」、これに対応する「ギャンブル依存症対策基本法案」、「参院定数の6増公選法改正案」などを成立させることが大きな狙いとなっています。
ただ、この中で目立たないものの「サービサー法改正案」が提出されることがメディアで報じられました。
不良債権回収ビジネスはサービサーと弁護士だけ
サービサーとは、銀行など金融機関に代わって不良債権を回収する法務相が認定した企業であり、サービサー以外には弁護士しか認められないビジネスです。
日本がバブル崩壊期に大量に発生した不良債権を処理するために金融危機が起きた平成10年に承認されたビジネスで、サービサーが扱うのは企業や個人の銀行融資など金融資産に限定されました。
「サービサー法改正案」は、その金融資産にプラスして、公共料金や携帯電話代、大学などの奨学金も扱えるよう法改正を行う方針です。
平成30年1月23日に行われた全国サービサー協会の交歓会では、理事長自ら「法改正をお願いします」と、出席した上川法務相ほか17人の与野党国会議員に呼びかけました。
リーマン・ショック後、リスケジュールで倒産激増は回避
銀行など金融機関では、不良債権を抱えているものの、リーマン・ショックが起きた翌年の平成21年12月に中小企業金融円滑化法が成立。
リスケジュール(条件変更)が時限法案として認められましたが、2回の法案延長後、終了後も金融庁による要請から金融機関では積極的にリスケジュールの対応をしている状況で、倒産も減少し、不良債権がサービサーに売却されていないのが実情です。
サービサーとしては、銀行の不良債権を二束三文で買取り、額面通りに債務者へ請求することがビジネスだけに、他の債権への拡大を要請したものです。
奨学金滞納額は2,396億円
学生を対象に入学金や学費などを貸与される奨学金は、卒業後に分割し返済するものですが、平成30年4月現在、3ケ月以上の滞納額は減少傾向にあるものの2,396億円に上ります。
サービサーとしては、この滞納額を二束三文で買取り、2,396億円を回収すれば相当な利益を得ることになり、回収法も厳しくなることが予測されます。
「サービサー法改正案」の成立により、取り扱う債権が拡大されれば、自己破産や自宅の売却など、新たな問題が起きることが予測され、懸念されます。