米国ではありえない異業種からの銀行参入
日本は、ソニー銀行やセブン銀行、イオン銀行、楽天銀行など金融業以外からの業種が銀行を立ち上げるなど、銀行参入に関しては比較的寛容な国で米国ではありえないことです。
異業種からの銀行参入は、対面営業の証券会社に対しネット証券があるように、インターネットを活用して銀行のサービスを低コストで利便性よくするソニー銀行のようなモデルもあれば、コンビニエンスストアに多機能なATM(Automated Teller Machine:現金自動預け払い機)を設置し、便利さを提供し手数料を収益にするセブン銀行などのモデルもあります。
ここ数年で、異業種からの銀行参入は増加傾向にありますが、銀行業界では金融行政の手厚い処遇で「シェアを奪われる」という危機感は見られません。
銀行はこれまで、生存競争にさらされずに行政に守られているという環境の中で、投資信託や保険などの金融商品の販売をも許可されるなど厚遇を受けてきました。
銀行には逆風!金融緩和政策・地方経済縮小・AI導入・人口減少
ただ、銀行業界においては、金融緩和政策により利ざやの縮小や、地方経済の縮小、AI(Artificial Intelligence:人工知能)など新技術による銀行サービスの無力化、日本の人口減少と逆風を受け、特に地銀や信金を中心に銀行のビジネスモデル存続が危ぶまれています。
この状況の中で、世界中のビッグデータを保有するIT(Information Technology:情報技術)大手のグーグルやアマゾンなどが銀行に参入すれば、本業の融資であっても新規参入の銀行にシェアを奪われるのでないかという問題意識が台頭してきています。
アマゾンは、顧客の購買・決済に関わるデータ、グーグルは、個人の検索履歴や各種のサービスを通じ得た信用情報データ、フェイスブックは、個人の人間関係など、既存の銀行が持つ情報のレベレルを超えたビッグデータを活用することもできます。
ビッグデータの活用で、銀行業界に変革?
国内の既存銀行の一部では、AIを活用し融資の否か、融資限度額を算出するサービスも始まりましたが、個人情報は限られたものであり、まだ、まだ優秀な目利きの代わりとはなっていません。
大手IT企業の持つビッグデータとは大きく情報量の開きがあり、ビッグデータを本気で利用し、AIを駆使して銀行業に参入すれば銀行業界が変革を迎えることにもなりえます。
かつて、データによる融資という「スコアリング」で融資を、新銀行東京や日本振興銀行が試みましたが見事に失敗。圧倒的にデータが不足していることが要因とみられています。
現在の金融業におけるAIは、年収や所有不動産という直接的な情報だけでなく、本人の性格や趣味、嗜好など信用力に無関係にも見えるデータをも当てはめ、解析を繰り返し答えを算出する仕組みになています。
異業種参入、銀行ビジネスよりユーザーの利便性を優先
異業種からの銀行参入がオープンな部分は、日本の金融行政の長所であり、銀行ビジネスよりもユーザーの利便性を第一に考えています。
コンビニエンスストアに行けば24時間現金を引き出せ、インターネット上でお金も動かせるなど、新規参入を拒む理由はないでしょう。
多種多様なビッグデータを保有する「アマゾン銀行」や「グーグル銀行」が、もしできたら、ユーザーにとってはより良いサービス、利便性の高い銀行となるのは想像できます。
現在でも、高齢者向けへの投資信託商品の押し付けや、カードローンの過剰融資、振り込め詐欺など金融業にはトラブルがつきまとっていますが、新たなシステムを備えた銀行の参入で問題もすべて解決する可能性もあるでしょう。
アマゾンやグーグルが、銀行業に参入したいと言えば金融庁は認めるのか。すでに将来起こりうるシナリとみて、金融庁では議論が始まっており、米国の中央銀行FRB(The Federal Reserve Board:米連邦準備制度理事会)も警戒姿勢を崩していないのが実態です。