協調融資先、前年度比120%増
政府系金融機関の日本政策金融公庫は平成30年5月23日、国民生活事業の平成29年度(平成29年4月〜30年3月)の創業融資実績が前年度比99.0%の2万8,116先と、ほぼ前年度並みの水準を維持したことを発表しました。
平成29年度実績の特徴としては、創業融資の際に民間の金融機関との協調融資の実績が、前年度比120.2%の3,630先、協調融資額は297億円と大きく増加したのが挙げられます。
これは、平成26年度の1,436先、139億円と3年間でともに倍以上に協調融資を伸ばしたことになります。
協調融資、金融機関はリスク分散、調達側は多額の資金調達がメリット
協調融資はシンジケートローンとも呼ばれており、大型の資金調達ニーズがあった場合に1つの金融機関からだけでなく、複数の金融機関が協調融資団を組み、1つの融資契約に基づいて同一条件で融資されます。
協調融資では、金融機関は貸し倒れのリスクを分散できるメリットがあり、調達側も多額の資金を調達することがメリットとなります。
まとめ役の金融機関は、金利と組成手数料や代理店費が収益となり、マイナス金利政策が継続される中、利ざやでは収益が取れないことから投資銀行業務の1つの柱ともなっています。
起業で新設する企業は増加傾向
創業融資は、起業により運転資金や設備投資など初期経費がかかるため、一般的には金融機関から資金を調達することになりますが、自己資金や実績、事業計画など必要書類がしっかり整っていないと時間もかかり、融資を断られる場合もあります。
ただ、ここ数年で起業などにより新設された企業は増加傾向にあり、東京商工リサーチによると、平成29年に新設された企業は13万1,981社と、平成19年の調査開始から13万社を超えたのは初となりました。
平成29年は、倒産や廃業・解散した企業は3万6,547社ありましたが、新設された企業はその約3.6倍に達し、設立初期の資金ニーズが生まれています。
小売業、情報通信業の企業が増加傾向
平成29年度の協調融資先としては、若年層企業への実績が引き続き増加しており、業種別では小売業や情報通信業の伸びが目立っています。
インターネット通販ショップやネット関連サービスなどIT(Information Technology:情報技術)スキルを持つ若年層の起業が増加していることが伺えます。
日本政策金融公庫では、今後も起業に関する相談を受け付け、女性や若者を対象にした専門スタッフも配置し、対応するイベントなども定期的に開催するとしています。
インターネットやスマートフォンなどの急速な普及でこれまでにない商品やサービスが生まれており、若者や女性の起業も増え、社会貢献に繋げられることが期待されます。
▼日本政策金融公庫:「創業ホットライン」 Tel.0120-154-505(受付:平日9:00〜19:00)、「女性、若者向け創業相談ウィーク」 平成30年6月〜8月28都市で開催予定
[2018.5.29更新]