スルガ銀、「不正、関与してない」はウソだった
スルガ銀行(静岡県沼津市)のシェアハウス向け融資で、書類改ざんなど不正・過剰融資が、地域経済に大きな影響力を持つ金融機関として責任やモラルが問わています。
平成30年5月15日、スルガ銀行は決算発表後に米山社長が「顧客、株主などに迷惑をかけた」と謝罪。問題が発覚して約半年が経ち、これまで同行の取材窓口では「不正に関与していない」と繰り返してきましたが、同社長は、「資料の偽造・改ざん」や「二重契約の存在」を明らかにし「相当数の行員が認識していた」と認めました。
融資先は1,000人超え、融資額は2,000億円超え
スルガ銀行スのシェアハウスオーナー向けの融資は、これまで5年間で顧客数が1,258名、融資額は2,035億8,700万円に上り、静岡県内の地銀では高い利子ながら顧客を集めたのが疑問となります。
このうち、シェアハウス「かぼちゃの馬車」を運営するスマートデイズへの融資は全体の約6割に当たる約1,200億円、残りは同様の形態の不動産業者10社でした。
スルガ銀行は、シェアハウス事業の収益性や融資先オーナーの返済能力など十分に審査し、融資することが求められていたはずですが、支店ごとの競争や組織ぐるみで融資を続けたのか、同行では第三者委員会に委ねるとしました。
スルガ銀行は、ずさんな融資を「増収増益の圧力が優位に立ち、審査機能が発揮できなかった」とコメントしました。
日銀、マイナス金利政策で不動産投資家向け融資が急増
シェアハウスやアパートなどへの不動産投資は、平成28年1月に日銀の「マイナス金利政策」の導入で超低金利の長期化で融資のハードルが下がり、不動産向けの融資が急増していましたが、これはスルガ銀行に限ったことでもないかもしれません。
政府系金融機関の商工中金でも、ノルマ達成のプレッシャーから書類改ざんが組織ぐるみで行われ、トップを交代させ、人員削減や店舗縮小、さらに民営化を迫られています。
また、同様に政府系の日本政策金融公庫でも、利子補給の拡大によって国庫負担が膨張し、地銀などから「民業圧迫!」と指摘されています。
利ざやで利益向上は無理、カードローンは過剰融資で指摘され、何を利益にするか?
銀行など金融機関は、「マイナス金利政策」により利ざやでの収益向上は諦め、個人向け無担保カードローンでは過剰融資が指摘されており、他金融機関との差別化や付加価値のついたサービスを提供しますが「違法」な行為は社会的に信用を失うだけです。
金融庁でも、厳しい環境で利益を出すスルガ銀行を高く評価していましたが、利益主義が不正を招いたとなれば金融庁の目利き力も懸念されます。
大手銀行5グループの平成30年3月期の決算も、実質業務純益が4グループで前期を下回り、国内で利益を出すのは大手行でさえ低迷した状況。中小企業の資金調達の貸し手となる銀行など、今後の金融機関の動向が注視されます。
[2018.5.22更新]