利ざや取れず競合も、「ミドルリスク企業」へも融資
日銀は平成30年4月19日、「金融システムリポート」を発表。日銀・黒田バズーカ砲である異次元金融緩和・マイナス金利政策は継続しており、銀行など金融機関は利ざやが取れず、経営が悪化傾向となり中小企業への融資競争が激化しています。
特に地銀や信金が増加傾向にある「ミドルリスク企業」向けの融資でリスクに比べ、金利が取れず底採算でも融資する金融機関が増加していると、日銀自身が懸念しています。
「金融システムリポート」は、半年毎に公表しており、金融機関と問題意識を共有する狙いがあり、金融政策の材料ともなっています。
「ミドルリスク企業」=「要注意先」
金融庁によると「ミドルリスク企業」とは、債務者区分が「要注意先」の企業を想定しており、事業での評価を的確に把握し、担保・保証に必要以上に依存しない融資に取り組むとしています。
債務者区分とは、金融機関は貸出先企業の信用格付をベースに債務者区分を金融庁の「金融検査マニュアル」を踏まえ決め、定められた算式によって企業の区分や貸出額、金利などが算出することが一般的です。
債務者区分には、「正常先」、「要注意先」、「破綻懸念先」、「実質破綻先」、「破綻先」に分類され、企業へはランクを知らせることはありません。金融機関にとっては「正常先」に貸出すことが理想であることは間違いありません。
「底採算融資」は、中小企業融資全体の25%
一方、日銀は地銀や信金の「ミドルリスク企業」向けに低金利で融資することを「底採算融資」と定義し、この案件が増加傾向にあると分析しています。
「底採算融資」は平成12年に中小企業向け融資全体のの17%でしたが平成28年には25%に拡大。「底採算融資」向けが占める割合が3〜4割に達する金融機関は2割ほどあると把握しています。
余剰資金や財務体制が弱い企業にとっては、低金利で借入れたい企業が多いことから「底採算融資」が拡大したと日銀はみています。
金融機関、企業の破綻に備える「貸倒引当金」、過去最低水準?
ただ、金融機関が融資先企業の破綻に備え「貸倒引当金」という資金を備える必要があるものの、現在は過去最低水準になっています。これは、日本経済が改善傾向にあり持続しており、「倒産」件数も減少しているためですが、企業の「廃業・解散」は倒産件数の倍以上になっており、増加傾向にあるのも現実です。
平成21年12月には、リーマン・ショックの影響により中小企業金融円滑化法のリスケジュール(条件変更)で企業の負担は減少しましたが、2年で回復すると時限法案にしたものの何度も延長を繰り返し現在でも、金融庁は金融機関に対し中小企業へ同様の対応を要請しています。
日本の企業の99.7%を占める中小企業・小規模事業者への融資で、新たな事業や拡販によって再び企業が再建することが期待されます。
[2018.4.24更新]